適当に雑談しておいてほしいというのは結構多くいただく相談の一つなのですが、僕の知る限り唯一雑談をAPIとして提供しているのがNTTドコモさんです。
雑談を実現するためのサーベイなんかもしてまして、一度記事の大西さんにもお話をお伺いさせていただきました。
ドコモの雑談APIが想像してたより結構すごかった
もちろん一般の人が期待するような「雑談」はできないのですが、意外とそれっぽい返事を返してくれます。試しにユカイ工学のBOCCOと組み合わせてしゃべらせてみるとこんな感じになります。
ちょっと見ずらいですが、左が僕が話しかけたやつで、右がドコモの雑談APIからのお返事です。
「キティちゃん猫飼ってるんかい!」って僕も思いましたよ。目の前にキティちゃんのロゴがあったんで適当に言っただけなんですが、なんかそれっぽい小ネタというかあるあるネタを返してくれます。
5往復くらい試してみた感じだと、投げかけた質問に含まれる特徴的な単語にまつわるそれっぽいエピソードを返してくれるようなイメージでした。文脈とかはもちろんないわけですが、あれこれ雑談っぽく見えるようになる工夫がされているように感じました。
具体的には教えてもらえなかったですが、それなりに大量の日本語データを持っているとのことでした。多分少なくとも日本一?
「雑談」という謎のニーズ
僕自身、研究してた頃から含めると10年くらい機械学習とかAI近辺にいるわけなのですが、「雑談」したいといわれるようになったのはロボットにかかわるようになってからだったりします。僕も正直最初「雑談したいんです」と言われたとき全くピンときませんでした。
率直にいうと、「雑談にお金が払われる理由がいまいちピンとこない」「雑談はおそらく技術的な問題ではない」の2点がぱっと思い浮かぶのでした。後者について補足すると、「雑談」が何を達成するべきであるのかが不明確なので技術的な問題に落ちてないということなんですね。
ロボットに求められる「雑談」とはなんだったのか
色々な人との議論を通じて得た感想によると、大きくは次の点に集約されそうです。
- 販売するロボットに親しみを持ってほしいという観点
- 人間にはコミュニケーションが必要であるという観点
実際問題として、人間が腹話術でロボットを操作すると多かれ少なかれ「うける」ことがわかっています。コンテンツを作る人の癖にも左右されそうです。
公開情報でイメージしやすいところでいうと、twitterのシャープの公式アカウントなどがわかりやすいのではないでしょうか。人間が中にいて、それ相応にいい反応をするとそれがとても「うける」わけです。
今日9/16はシャープの誕生日であるとかで、非常に盛り上がっておりました。
このような感じで、「雑談」を通していい感じに親しみを持ってもらいたいというのがひとつの意図としてあるようです。
もうひとつの「人間にはコミュニケーションが必要である」という観点ですが、これも直感的には正しいように思えます。ので、これをストレートに雑談AIで代替できれば・・・というのがおおむねの要望であるように思います。
人間が相手じゃなくても雑談できる・親しみを持てる人類
想像しやすいところでいくと、多くの人は赤ちゃんに話しかけるのではないでしょうか。しかし、客観的に考えると赤ちゃんが周りの人の発言を理解しているようには思えません。ので、会話は明らかに成り立っていないのですが、どうもコミュニケーションをとっているような気分になれます。
もう少し人間から離れたところに行くと、人形やペットに話しかけるという人も多いのではないでしょうか。僕は、PCとかサーバに「がんばれー」「よくやった!」とか言ってる人も見たことあります(笑)。最近よくある事例ではルンバでしょうか。実は、人間は自分たちが思っているよりも幅広いものとコミュニケーションをとることができます。
他にも、テレビに話しかける独り暮らしの人など例を挙げればきりがありません。
実のところ「言葉」という高級なことをせずとも、モノに親しみを持たせること自体は可能そうです。
「雑談」は何を解決しようとしているのか。価値がありそうで言語化できない。
シャッフルチャットなど色々なコミュニケーションツールがはやることを考えると、やはり人類はコミュニケーションやどうでもいい会話・雑談に一定の価値を感じていることは事実であるように思います。
しかしながら一方で、その価値を具体化しようとするのはなかなかに困難です。ロボット神父さん?ロボット相談室?いろんなアイディアは出ますが、本当にそんなロボットたちと雑談したかったのでしょうか。
価値がありそうだけど、なんだかよくわからない。そういうものが「雑談」に今求められている領域であるように思います。