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誰得advent calendar 6日目: 組織形態と戦略に関する徒然

誰が得するのかよくわからないadvent calendar6日目です。

結構いろんな組織構造について見るのでなんとなく徒然の感想です。

どんな組織形態があり得そうか

僕の観測範囲について言うと、組織形態として挙げられるものとして下記のようなものがあります。

  • ニーズ・ドリブンな組織
  • アセット・ドリブンな組織
  • サービス・ドリブンな組織

ニーズ・ドリブンな組織というのは、特定のお客様の要望・要求に答えて価値提供するプロフェッショナルファーム系の組織で、イメージ悪い言い方をあえてすると受託です。期間と予算がかっちり区切られたプロジェクトベースで仕事を回し、期間が終わったらチーム解散。プロジェクト・ベースだとプロジェクトの良し悪しが割と容易に利益で測れるので比較的運営しやすいのが特徴。

アセット・ドリブンな組織というのは、アセット(技術・資産・ノウハウ)に特徴があり、そのアセットを核として製品を作ったりサービスを提供する組織です。イメージで言うと、製薬会社であったりARMであったり賃貸業であったり、特許技術や知財や不動産そのものに価値がありそれを元に製品・サービスを作ったりライセンスしていくような組織です。

最後がサービス・ドリブンな組織です。すごくユーザに刺さるサービスがあって、そのサービス提供の価値を向上し、コストを下げることに注力する組織です。イメージとしては、PixivであったりAmazonであったりです。

この3つは完全に別れているというわけでもなく、複数の特徴をちょっとずつもつこともあるのかなと思います。

この3つの組織に分けたわけ

話題のプロダクトマネジメントの本「Escaping the Build Trap: How Effective Product Management Creates Real Value (English Edition)」には下記の様な記載があります。

A valuestream is all of the activiteis needed to deliver value to the customer

(中略)

products are vehicles for value. So, if your app, interface, or feature is not inherently adding value on its own, it's just a piece of the entire product. (中略) It just means you have to look beyond just that piece to understand how to manage for value delivery and creation.

組織形態の考え方として、どの様に勝ちが流れれているのかに合わせるべきであるという主張がなされています。また、一つの機能ではなくどのように価値が提供されているかを理解すべきであるとしています。

つまるところ、組織形態はどのように組織が価値提供をするかによって規定されるべきであるということを言っています。

そして、価値提供という視点で考えたとき、価値の源泉をどこに置くかという観点で考えると顧客の強いニーズ、企業の持つアセット、提供するサービスであるという考え方です。

ニーズ・ドリブンの組織構造

ニーズドリブンの場合いわゆるマトリックス型の組織構造をとることが一般的であるように思います。組織の軸として2つあり、ひとつが職能軸、もう一つがたいてい顧客の業種軸です。レポートラインは職能軸でもち職能ごとの適切な能力開発を行うとともに、実際のプロジェクトは顧客の業種軸で持って顧客への最適なソリューション構築を行うという形です。

この形が成り立つのは、大抵の場合プロジェクトベースで仕事が進むため、期間と予算が明確であり、その目的に合わせた最適なチーム組成を行うモチベーションが高いからです。

アセット・ドリブンの組織構造

アセット・ドリブンの組織構造においては、機能別の組織構造がベターであることが多いように思います。アセットの開発に価値の中心があるため、そこを軸にして戦略を構築していくことになります。そのため基本的に1種類のアセットごとに1事業部でその下にアセットに合わせた機能別組織を引くというのがリーズナブルであるように思います。

サービス・ドリブンな組織構造

ユーザに提供するサービスを価値の源泉とし、その価値の向上とコストの低減を狙いとする組織構造です。この組織形態では、サービスを提供する上でのステークホルダーを捉え、その各々に対して最適なサービスを開発できる構造である必要があります。

少し抽象的なので不動産仲介業について考えてみましょう。不動産仲介業には様々なステークホルダーの考え方がありえます。例えば、買い手・売りて、貸して・借りてという考え方もできますし、地域ごとのお客さんと考えることもできます。もう少しひねると、投資物件を検討している人もいれば、別荘などの賃貸の種類で切ることもできます。どうステークホルダーを捉えるかは企業毎に多様なので一概には言いにくいですが、ここに戦略による差が出やすいとも言えます。

それぞれのステークホルダーにとっての価値を最大化しコストを最小化することを必要とされるわけなのですが、ステークホルダーによって状況が異なるためなかなか一概にこうとは言い切れない部分があります。

ここについては、誰得adventのどこかでもう少し考察してみたいかなとぼんやり思っています。Agile, Scrumなどの汎用フレームワークたくさんありますが、これらのフレームワークは組織構造についてはプラクティスを与えないので、実際のところ組織構造の議論の根拠にはあんまり向きません。案外難しい問題なのです。

最適な組織構造をどう決めるのか

超理想的なことだけ書くと下記なのですがなかなかそう簡単には行きません。だいたい逆コンウェイ戦略と言っていることは同じなのかなと思います。

  • 組織構造は戦略のみによって規定されること
  • 戦略の変更を組織構造に当てはめる阻害要因が少ないこと
  • 組織構造の変化が合理的な時間で完了すること

一般的に企業は様々な脅威にさらされており、事業環境の変化に合わせて最適な対策をすることを求められます。代替品が出てきたら対策しないといけないし、ライバルが伸びてきたら戦略的撤退をするかもしれないし、海外進出したら合わせた体制が必要です。なので、企業のことだけ考えたら組織はいじれたほうが良いわけです。

一方で、人間のモチベーションであるとか、ケイパビリティというのは一朝一夕でどうこうなるものではありません。今までやってた仕事いきなり取り上げられたらそりゃまぁデモチするよね。で、新しい仕事いきなりやれって言われても大抵できないわけですよ。ほぼ全部の仕事がいきなりチャレンジじゃんみたいな。

こう考えたときに良い落とし所というのが、ボトムアップで戦略いじるっていうのが良い落とし所なのかなぁとぼんやり思うところではあります。どうせ変わるのは避け得ないので、変えるんだったら自分で変えたほうが良くないってくらいの雑な発想ではあります。「こちらのほうがベターだから自分たちはこう変わる。戦略も変わるべき」で良いと思うんですよね。

戦略をボトムアップでいじるのに何が必要か

戦略をボトムアップでいじることが正しいかはまた別にして、どうやったらそれが実現できるかを考えてみると・・・・

  • 戦略がクリアに可視化され、認知されている状態を担保する
  • 強いミドルマネジメント層をつくる
  • トップマネジメントは検証と最大化に注力する

なかなかどれも難しいんですが。

まず、修正する対象がないことには話は始まりません。ここがクリアに理解可能な状態であることは何よりも重要です。

次に、ミドルマネジメント。なぜここが重要かというと、結局戦略の浸透というのはミドルマネジメントのお仕事なんですね。いくら目に見える形になっていたとしても、日々の業務で使われなければ浸透しません。逆に、戦略に変更を加えるとしてもそれなりに論拠を持って会話できないとなかなか物事をすすめることも難しいです。

最後にトップマネジメント。ともすると、細かいこと言いがちになる人もいるんですが、基本的には上がってきた案を検証し最大化することに注力して、ミドルマネジメントに価値提供に常にフォーカスしてもらう事が必要です。うっかり細かいこと言っちゃうと、言われたほうがタスクランナーになってしまって、組織の価値の上限がトップマネジメントの力量で限界を迎えてしまいます。それよりも、価値とはなにかどうすれば検証できるのかを常に考え続けることで組織全体のバリューアップを図ることが健全であるように思います。

という徒然でした。