頂いたので、ざざっと読んでみました。245ページの本を2時間くらいで斜め読みした感想なので、多少いい加減なところがあるかもしれないですがその時はコメントください。
本書は、「エンジニアの」とはなっていますが、「知的生産術大全」とでも呼ぶべき書籍です。豊富なリファレンスをベースに知的生産に関する事項を網羅的に扱っており。そこに著者のエッセンスを加えて1冊の本にまとめ上げています。
エンジニアの知的生産術 ──効率的に学び、整理し、アウトプットする (WEB+DB PRESS plusシリーズ)
- 作者: 西尾泰和
- 出版社/メーカー: 技術評論社
- 発売日: 2018/08/10
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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著者の西尾さんのscrapboxは色々と参考になることが書いてありますので、こちらもリンクを貼っておきます。
網羅的な知的生産術に関するノウハウ
本書は知的生産に関するかなり下記のような広範な話題を扱っています。
- 新しいことを学ぶ方法
- やる気・モチベーション
- 記憶の仕組み
- 効率的なインプット方法
- 考えをまとめる方法
- アイデアを思いつく方法
- 自分の「領域」の絞り込みかた
それぞれに特化した本というのは数多くありますが、これらを一貫して取り扱った書籍はおそらく珍しいのではないでしょうか。
個人的なお勧めの読み方は「自分の興味のある所から読む」です。多少、前後関係はありますが、基本的には各章をそれぞれ独立に読むことが可能です。まず目次を見て、自分の気になるところから読み始め、そこから読み広げていくと良いのではないでしょうか。
客観的なリファレンスがされている
僕が本を読んでいて不満に思うとき、その多くは「どのくらいが客観的に正しいことなのか」がよく読んでいてわからないという点です。果たして著者が思っているだけなのか、一般に受け入れられている事実なのか、そこがよくわからないことが多いです。
本書では、きちんとリファレンスが示されており、古典的なものから最近のものまでひろくリファレンスされています。
感想: 何を学ぶかはかなり重要
本書の7章「何を学ぶかを決めるには」は、かなり重要なテーマでここに踏み込んだ書籍はあまり多くないように思います。230ページにも「ポジショニング」の話が出てきますが、これはかなり重要な観点です。
例えば、学生からよく言われる問い合わせとして「○○を学ぶべきか」というのがあります。「AIを学ぶべきか」「データサイエンティストになるべきか」、さらには「学生時代は全力で遊んだほうがいいのか」などいろんなことを言われます。これらは、すなわち「ポジショニング」です。雑に言って「他社との相対的な位置づけを明確にして、資源の配分を考える」方法論です。
例えば「AIを学ぶ」ポジションをとる場合、相対的に「スマホアプリ開発を学ぶ」というポジションを捨てるということです。「AIに独自の優位性を見出し」「AIを学ぶことに資源(お金・時間とか)を集中する」ということです。
「AIを学ぶべきか・・・」については論旨ではないので割愛しますが、有限リソースを活かすうえで重要です。
感想: エンジニアリング要素は排除してもよいのでは?と思うところもある
エンジニア(とくに、ソフトウェア系)の感覚を出発点にしているところが少しあるので、そこが共感しにくい(わかりにくいというのともまた違う・・)という点がある気がします。
もちろん「エンジニアの」と書いとるがな、って言われるとその通りなのですが。
個所としてはそんなに多くないので、気にしないで読み進めるのが良いと思います。今後、改版していく中でいつしか万人のための知的生産術に昇華するのではないかなという期待があります。
総括: 知的生産って難しいなーという(雑)
本書の論旨からは離れますが、大体の人は「自分は賢くありたい」「自分はホワイトワーカーだ」って思いたいんじゃないでしょうか。
僕のたくさんある困りごとの一つで、「ノウハウを持っているので手を動かしたくない」という趣旨の話がよくあります。僕もたまーに言うんで(笑)気持ちはわかるんですが、この時に「生産」とは何なのかなぁというのをよく考えます。
知識やノウハウを簡単にお金に換える方法の一つは、「テンプレート」を販売する方法で「この通りやっておけば、概ねうまくいくよ!」というやり方を売る方法です。怪しい言い方をすると情報商材なんですが、なんとなくパッと資料にまとめてそこに値段をつけるとうっかり売れたりします。結構、錬金術的です。これは「知的生産」なんでしょうか。
ある種、書籍も同じような感じで、「このノウハウが欲しい」と思った人が本を手に取って買うわけですね。執筆もある種、知的生産であるように思います。
実際のところ、「知的生産の価値」というのを定義づけることは非常に困難です。法律知識だけなら、勉強すると浅いところは大体身につきます。大企業の研修でコンプライアンス研修とかあるんじゃないでしょうか。浅い部分はそんなものです。
じゃぁ、弁護士は不要なのでしょうか?一部の弁護士の独占業務を除いてみれば、大体のことは自分でできそうです。けど、それでも弁護士に顧問をお願いしたり、法的な相談をします。それはなんでなのでしょう?
弁護士Aさんは、弁護士Bさんにお金を払って相談することはあるのでしょうか?色々なことを考えてみると不思議な気分になってきませんか?
前述の「AIを学ぶべきか」も同じような話があります。AIを学ぶ、僕は特に反対をしません。けど、その価値は何なのでしょうか。人材が足りてないから?じゃぁ、人材が業界に飽和したら価値が低くなるのでしょうか。100人を雇えば、100人分の生産ができるのでしょうか。101人目は本当に不要なのでしょうか。
よくわかりませんね。
実際に「知的生産」というものの明確な定義は、僕の知る限りでは存在していません。何を生み出したら生産したととらえるかは、ビジネス上それなりに重要なはずですが、実はここがすっぽり存在していないように思います。
果たして「知的生産」とは何なのでしょうか。その価値はどこに存在するのでしょうか。なんか、そういうことを思い出しました。
まとめが、本書と関係なくてあれですが、多面的に知的生産を捉えた本書は読み応えあるかと思います。
エンジニアの知的生産術 ──効率的に学び、整理し、アウトプットする (WEB+DB PRESS plusシリーズ)
- 作者: 西尾泰和
- 出版社/メーカー: 技術評論社
- 発売日: 2018/08/10
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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