「事業開発マネジメント」というとわかりにくいが、中小企業やスタートアップをこれから創業しようとする人が知っておくべき必須事項が書かれている書籍でした。おそらく、企業の新規事業開発の若手や、スタートアップメンバーも読んでおくとよいでしょう。
創業者の自伝や、ファイナンスなどの特定領域に絞った書籍が多い中、「事業開発マネジメント」は全領域を幅広く客観的に取り扱っているところが特徴です。創業者の熱い思いやとがった記述は特にありません。その分面白くはないかもしれませんが、知っておくべき知識を手に入れることができるのではないかなと思います。
- 作者: グロービス経営大学院編著,堀義人,グロービス経営大学院
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2010/03/05
- メディア: 単行本
- 購入: 1人 クリック: 41回
- この商品を含むブログ (2件) を見る
創業にまつわる幅広い話題
本書の取り扱う領域は下記のように大変広いです。(目次から抜粋)
- アイデアとビジネスモデル、ビジネスプラン
- 新規事業戦略の定石
- 人材・組織づくりとリーダーシップ
- 資金調達
- マネジメント・システムの強化
- 21世紀の新ビジネスに必要なもの
- (附録)ライフネット生命保険のビジネスプラン
これらが網羅的に述べられています。創業の話というと、どうしても「アイデア」と「資金調達」の話に偏りがちです。そんな中で本書は、シーズを探索する部分から、採用、組織化、資金調達、エクジットまでの話題を幅広く客観的に取り扱っています。
たとえば、「資金調達」一つを取ってみても、多くの書籍が出資による調達にフォーカスが置かれています。それは、信用のない創業したばかりの企業では負債による調達が難しいという点では正しいように思います。
しかし、本書では日本政策金融公庫による融資や、自治体による助成金、信用機関による信用担保など、網羅的な話題をきちんと取り扱っています。また、日常的な金融機関とのやり取りの重要性や、クレジット(信用)の積み上げの重要性についても議論します。
このように、本書はうっかりすると「成功者のひとりがたり」になりがちなベンチャー業界にあって、客観的に必要事項をまとめられている書籍といえます。
組織作りとマネジメントに触れられている数少ない本
話題が広い分、内容は浅いという点は目をつぶるべきでしょう。その分、創業のための書籍としては珍しく、組織論・マネジメント論にも触れられた書籍です。
実際、組織作り・マネジメントは売り上げが上がっている組織ほど重要になります。
私見ですが、例えば、「受託で儲かっている企業は、自社事業にフォーカスしづらい」というような批判がベンチャー界隈では多くされます。この本質は、多くの場合組織作りの問題に帰着されます。
売り上げが上がるとそこにかなり強い求心力が生まれます。だからこそ、組織ごとのミッションの設定、KPIの設置、組織文化の醸成をすることで、少しずつの変革を行う必要が出てきます。
本書では、こうした派手さはないが本質的に重要な事項についても網羅的に触れられています。
まとめ
これから新規事業を起こしたい、これから創業したいという人は本書をいちどざっと斜め読みするとよいでしょう。それだけで、様々な場面での「うちて」の幅を広げることができます。
それぞれの「うちて」の深堀は、その都度ごとに業務や周辺の人に助けてもらいながら実務の中で広げていくのがいいのではないかと思います。
本書は、そうした「はじまり」に際して必要なキーワードを授けてくれる本であると思います。
- 作者: グロービス経営大学院編著,堀義人,グロービス経営大学院
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2010/03/05
- メディア: 単行本
- 購入: 1人 クリック: 41回
- この商品を含むブログ (2件) を見る