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リクルートのすごい構”創”力

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mediumからの転載です。

R25、ゼクシィ、ホットペッパーなどの新規事業を次々と成功させるリクルートが、どのように新しい事業を生み出し、育てて、伸ばしていくのかを分かりやすく解説した本でした。

ホットペッパーなどの具体的な事例をベースに織り込みながら、著者のコンサルティング的観点でフレームワークへとまとめられており、非常に理解しやすい。

新規事業に携わる人のみならず、経営者として新規事業を取り込んでいかなければならない人たちにとって、非常に参考になる書籍であると思う。

新規事業を成功させる3つのステージ

新規事業というと「新しい事業を起こす」=「0を1にする」ところにのみ着目されがちである。しかし、リクルートは1を作り出すのみならず、1を10にかえ、さらに時代の変化に合わせてどんどんと事業を変化させていくところまで含めて事業開発を考える。

本書では下記の3ステージでこれをまとめている。

  • ステージ1: 0→1
    世の中の不をアイデア
  • ステージ2: 1→10(前半)
    勝ち筋を見つける
  • ステージ3: 1→10(後半)
    爆発的な拡大再生産

ステージ1: 0→1 世の中の不をアイデア

リクルートの新規事業は世の中の「不満」「不足」「不便」・・・などの「不」から発想を得て、新規事業を検討します。例えば、当時企画を担当していた山口文洋さんは全国100名の受験生、数十名の教員と保護者を対象に調査を実施したところ、なんと3割も「予備校に通いたくても通えない人たち」がいることを発見した。

こうして発見した「不」を元に事業アイディアをねり、ステージゲート方式で事業を磨き上げる。「この時期までにこうなっていないといけない」というゲートを設定し、それを達成できなければ即撤退の判断をする。ゲートを通過すれば、少しずつステージが上がり投資されるリソースも増えていくという仕組みだ。

そしてこうしたアイディアを磨き上げる一連の流れを仕組化する。アイディアが自然発生的に生まれるのを待つのではなく、積極的にアイディアを育てる仕組みをリクルートは持っている。

ステージ2: 1→10(前半)勝ち筋を見つける

リクルートはこうして生まれた新規事業を一気に拡大するための勝ち筋をフィジビリを繰り返すことでみつけ仕組み作りをする。リクルートはこの仕組みが強い。

まず、マネタイズ設計をしっかりと行う。Web系ベンチャーでは「まず無料で公開してから有料化を行う」ことを目指す結果、マネタイズできずに撤退するベンチャーも多い。リクルートでは下記の3点をポイントにマネタイズ設計をする。

  • クライアントが明確であること
  • 「誰が」「どのお財布から」お金をはらうのか
  • 利益を生むオペレーションモデルが確立するか

マネタイズ設計をしたうえで、価値KPIの設定を行う。リクルートでは価値KPIが設定できない事業はフィジビリを完了できない。

リクルートの価値KPIの設定の仕方は、「事業のゴールに最も関係の深いKPI」を設定する。ゼクシィを例に挙げると、一般的には販売数や同封された問合せはがきの回収数をKPIとしがちである。しかし、紹介される式場の立場から見た時、問い合わせが来たとしても来場予約に結びつかなければ意味がない。そこで、実際に結婚式場に足を運んだ人の数をKPIとして選択した。

このように、明確なKPIを定めることで、なにをすべきか・何をなさざるべきかが明確になる。だから、価値KPIの設定にリクルートはこだわりフィジビリを繰り返す。これが勝ち筋につながる。

最後に、こうした一連の取り組みを通して得た知見を、経営層と共有する縦の共有と、同僚や他部署と共有する横の共有する。これをリクルートではぐるぐる図をまわすと呼んでいる。現場で得た知見を、即座に縦と横ですごいスピードで回し、必要な知見やアドバイスを素早く得ることで、どんどんと事業を推進していく。

そして、勝ち筋が見つからなければスパッと切り捨てる。勝ち筋が見つかるまでは決して次のステージへつなげず徹底的にフィジビリを行うところが成功の要因である。

ステージ3: 1→10(後半)爆発的な拡大再生産

一連のフィジビリを終え、一気に拡大再生産していくのが最後のステージになる。

まず価値KPIをマネジメントする、価値マネを徹底する。価値は「自然に生まれる」のではなく、生み出すのであるという精神がこの根底にはある。ともすると、売り上げばかりに目が行き、本当に顧客に提供する価値は何かという意識合わせを怠りがちである。価値KPIをさだめ、「やること」「やらないこと」を見定めることでこの意識合わせをしっかりと実現する。

そして、このKPIを確認する営業会議にあたるヨミ会では、売り上げや進捗などの結果を単純に確認するということをしない。ヨミ会では、「お客様はなぜ買ってくれたのか」「あと何があれば買ってくれたのか」というような「なぜ」にを解き明かすための会議だ。この「なぜ」で吸い上げた情報をぐるぐる図で共有し、次々と手を打っていく。

そして、吸い上げた情報からKPIをあげた成功事例を「型化」し横展開することで一気に拡大する。たとえば、初期のホットペッパーはほとんどの地域でうまく機能していなかったが、札幌での成功事例から「コア商圏、飲食、居酒屋、1/9コマの広告、3回連続受注、20件訪問」という「型」を見出し、全国に展開することで成功を収めた。成功パターンを誰もが行えるように習慣化しアタリマエに実行できるように徹底する。この「型」が価値マネを一気に加速させる。

最後に、リクルートは成功に甘んじず、自らの成功を破壊して次のステージに進む。イノベーションのジレンマでは、大企業の成長が鈍化するとき代替する手段にとってかわられることを示した。リクルートでは、自ら事業の鈍化を見抜き、自らを破壊してイノベーションを起こしていく。

ホットペッパーは当初「クーポンマガジン」として始まったが、多数の飲食情報サイトが立ち上がり、競争優位が失われつつあった。そこで、「ホットペッパービューティー」「ホットペッパーグルメ」は予約サイトとして舵を切り、さらに空席情報と直結させることで送客力を高めるため「Airレジ(iPadの店舗向け予約管理システム)」を開発した。「Airレジ」を使うことで、広告による送客ビジネスから、空席を在庫としてもつ事業へとホットペッパーを転換させたのである。

Airレジの普及にあたっても、ここまでに紹介した様々な手法を元に普及の糸口をつかんでいく。特にAirレジの利用データから離脱の予兆を分析しフォローしたり、多くの改善を実施し、半期で150程度の改善施策を実施した。

まとめ

本書のエッセンスのみを紹介したつもりだが、かなりの長文になってしまった。それほどに本書の内容は濃い。

リクルートの成功の裏にあるのは、徹底したフィジビリを通した価値KPIの設定、そして成功事例を抽出するための「なぜ」を追求するとりくみ、抽出した成功事例を徹底的にコピー可能にする「型化」であるように思う。

実際の書籍では、リクルートの様々な事例を具体例としてより理解しやすく、参考になるケースが載っている。

新規事業を成功させたい人には必読の一冊であるように思う。

 

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